激ヤバ!毒鱗粉に冒されたヒロイン

「――シボレナ様、散布完了しました」
 廃倉庫、クネクネが世話しなく動き回っていた。シボレナは振り返りドクガネジレの姿を認めた。
「ご苦労ね。補充し次第、また散布にいって頂戴」
「了解しました、シボレナ様」
 ドクガネジレは頷き、クネクネたちが調整している機械へきびすを返した。その機械は透明なパネルだけで構成され、その内部にどろどろとした液体が満たされていた。機械が時折攪拌を加えていた。ドクターヒネラーから委ねられたこの作戦を、シボレナは今日中に完了させる予定だった。

 ドクターヒネラーの作り出した猛毒を、ネジレ獣に散布させる。一般市民とメガレンジャーを毒で冒し、抹殺する。既にメガレンジャーがこの毒に冒されたのは確実だった――今日夕刻をもって、ネジレジアにとって目障りだったメガレンジャーたちは――
 シボレナは笑みを浮かべた。どうやら――目障りな死に損ないがここの場所のことを察知したらしい。
「そこまでよ!」

 メガピンクへのインストールを完了させたみくは、千里――メガイエローとともに、ドクガネジレの消えた建物の中へ入っていた。メガスナイパーを手に敵の前へでる。
「メガイエロー、それにメガピンク――どうしてここが!?」
「あなたたちのやることなんて」
「全部お見通しなんだから」
 みくは千里と目線を合わせた。千里の表情は精悍なマスクの中に隠れていたけど、全部決めてあった。さっさと片づけないと、人々の命が救えない。自分たちも死ぬことになる。
「クネクネ!」
 シボレナの号令にクネクネたちがさっと波を作った。
「いくよ、みく!」
「うん!」
 クネクネなんかに時間をかけてられない。駆け出すメガイエローのあとを追って、みくは駆け出した。
「メガスナイパー! シュート!!」

 シボレナはドクガネジレをみた。くだで機械とつながれ、毒素を吸い込んでいる――舌打ちをした。あの毒素はドクガネジレの体内では生成されない。合成した毒素をドクガネジレに吸収させなければ効果がない。
「間が悪いときに――」
 クネクネと相手をするメガイエローとメガピンクがいる。クネクネが倒されてしまうのは時間の問題だった。夕方になれば、この目障りな小娘どもは死ぬというのに――
 シボレナはサーベルを構えた。幸い、以前に幻想空間に引き込んだとき、メガイエローの戦闘パターンは分析済みだった。シボレナが駆け出すと、クネクネはイエローから引き、ピンクへと移った。
「お嬢さん、この間の始末がついてないわ」
 シボレナは告げた。相手は迷っているように見えた。こんな時は、ドクガネジレを倒すことを第一に置かねばならない。だが――それは阻止しなければならない。
「始末? あれは――」
「あれは、勝負持ち越しだった筈よ――」
 勝ちか負けか、そんなこと、シボレナにはどうでも良かった。メガイエローはゆっくりと構えを取った。
「いいわ。決着をつけてあげる」
 勝った――シボレナは笑みを浮かべそうになるのを堪えた。たとえこの身が滅びても、ヒネラー様が再生してくださる。負けはしない。イエローの腕がまばゆく光った。
「ブレードアーム!」
 前回と同じ技――シボレナは身体を後ろに反らせてから身体をひねった。電撃に光る腕をかざしながら一直線に迫ってくるメガイエローを避けると、背後に回り込んだ。イエローの動きは予想よりも早かった。手をクロスさせて、両腕が同時に光った。そんなの想定の範囲だった。シボレナは、その手の届く範囲に入らなければ済む。
「はっ!」
 振りおろしたサーベルが受け止められた。引き、数歩下がった。転がる動きを意識した。余裕なさそうに振舞う。相手の油断を誘う――相手は、軽はずみな挑発に乗るような小娘でしかない。
「どうしたのかしら? 同じ手は二度と通用しなくてよ?」
「くっ……」
 少し足下がふらついているのがみえた。予想通り――あの技はパワー使う――向かってくるメガイエローを、右に左に避ける。離れすぎず近づきすぎず――
「――待ちなさい!!」
「待つわけないじゃない……!」
 サーベルを振るった。腕から力を抜く。イエローの腕と交差する――小気味いい音とともに、サーベルが手元から抜け空中へ跳ぶ。放物線を描き、シボレナの背後の地面に刺さった。
「さあ!」
 余裕な体勢を取るイエローに向かって、シボレナはひきつった顔を見せた。サーベルを取ろうと動いて見せると、追随してきた。腕が振りかざされエネルギーをまき散らしながら、二人の内側へ入り込んでくる。
「えい!!」
「ハッ!」
 シボレナは手を握り、小娘の腹部に向けて下から持ちあげるように拳を決めた。バチバチと音がほとばしった後、イエローの腕から光が消える――鈍い感覚とともに、その肉の中にめり込む拳――
「ああああぁっ……」
 声は戸惑いがちに震えていた。拳の上に覆い被さる身体を突き飛ばすと、地面に仰向けに倒れる身体を見た。そう、必殺技を使えばエネルギーを消耗する。それが失敗すれば、必殺されるのはシボレナではない。
「どうしたのかしら? お嬢さん?」
 あとは簡単だった。シボレナはその五色のプレートの並べられた胸に、ヒールを突き立てた。
「あああああああ゛っぁ!」
「柔らかいわね…ふん、こないだの屈辱を、この私が忘れるとでも思ったの?」
 シボレナは地面に刺さったサーベルを抜く。先はねじれていた。ただねじれているのではなかった。
「ふざけないで――!!」
 ヒールをあげた。鮮やかな黄色い胸元に黒い泥の痕がついていた。その先にサーベルの刃先をあてた。
「ふざけてなんかいないわ」
 マスクを掴む。身体を引き上げさせた。首が引っ張られ、内側から悲鳴があがったが構いはしなかった――壁に張りつけにすると、顎に手をあて、ぐいと顔を近づけた。
「何かいうことはある――お嬢さん?」
 顔は見えなかった。だけど、恐怖を感じていることは確実だった――シボレナはそれを与えることが出来た。
「――ないわ」
「そう、他のメガレンジャーに教えてあげようと思ったのに。あなたがどんな命乞いをしながら死んでいったか」
 サーベルを持ち直した。刃先をイエローの胸の谷間へ向ける。スーツの上からでも柔らかい感触は明らかだった。力を入れた。表面に少し傷がつき、中での出血が染みでてくる。
「地獄へ送ってあげるわ」
「やるなら、いっそのこと――」
「まだわたし、肝心な言葉をきいてないわ」
 メガイエローのマスクに表情はない。目が合ったように思えた。
「解ってるわね。メガイエロー。わたしはあなたの口から、その言葉が聞きたいのよ」
 胸は黄土色に変色していく。白い布地の部分まで広がり、黒っぽく染まっていく。
「わたしは死ぬんでしょう?」
「だから、死ぬのが怖くないとでも?」
 背後に気配、シボレナは片目を向けた。
「メガイエロー!?」

「お仲間はクネクネたちを倒したみたいね」
 メガピンクが銃口を向けている。
「メガピンク、わたしはいいから、ドクガネジレを倒して!!」
「――出来る筈がないわよね!?」
 シボレナは声をあげた。さっきのイエローのように、ピンクの迷いが手に取るように解った。あとは、針にかかったメガピンクの糸を引き寄せるだけだった。
「メガピンク、あなたがドクガネジレに向かえば、私はメガイエローを殺す、絶対にね」
「シボレナ、メガイエローをはなしなさい!」
 メガピンクがようやく声をあげた。
「そんなことはしないわ。あなたにも解ってる筈じゃない」
「うっ…」
 うめき声は震えて響いた。シボレナは笑った。相手の屈服を待つ間でも無かった。ドクガネジレの毒が身体を冒し、胸を抑えながら伏せるメガピンクがみえた。背後にクネクネが迫っていた。シボレナは頷いた。
「あああぁっ…は、はなして……!?」
 逃れようと肩を震わせる。力は弱い。
「メガピンク!?」
「メガイエロー、ご自分の心配をしたらどう?」
 シボレナは向き直った。メガイエローは目の前で起きた状況に完全にはついていけてなくて、少し反応が鈍かった。
「余計な――お世話よ! メガピンクを離してあげて!」
「それより前にいうべきことがあるんじゃない?」
 シボレナは笑みを浮かべた。「そう――ならいいわ。あなたとメガピンクは生かしてあげるわ」
 イエローが反応する。サーベルを胸からはずしつかんだ腕を離した。猫背になって投げ出されてよろつく。そのまま倒れ込むメガイエロー ――マスクが少し重そうに頭をうなだれさせていた。
「どういうこと?」
「あなたもそろそろよね? 毒が身体をまわり出すのは?」
 声にイエローは答えなかった。ただ無言でこちらを見つめたまま、胸に手をあてていた。その胸元の上下する動きが少しずつ目立ってきた。気を張っても、死の危機から逃れることは出来ない。
「だからといって……メ、メガレンジャーはネジレジアに屈したりはしないわ」
「あなた自身はそうでも、仲間の為なら違うんじゃない?」
 クネクネがシボレナの前に、メガピンクを投げ出した。力無く横たわるピンク――クネクネがスカートを踏みつけ、動かないようにしている。
「メガピンク――あっ゛ぁっ!!」
 その肩にすがりつこうとするイエローは、もつれたマリオネットのように転がる。
「ピンクだけ助けることは出来ても、メガイエロー。あなたが死んでしまっては、ピンクはどう思うかしら? それに……メガピンクだけじゃ、わたしもクネクネを抑えられないかも知れないわ」
 ぴくっとマスクが上を向く。イエローはほとんど意識の薄れかけたピンクに比べればまだ、ずっとハッキリしているように見えた。言葉はきこえていて、それに反応が見えた。
「卑怯者……」
 言葉は弱々しく、涙の絡んだような声になっていた。
「それはあなたのことよ」
「…………どうすれば」声は小さく今にも消え入りそうな声だった。「どうすれば、メガピンクと……わたしのことを助けられるの?」
「簡単よ」
 シボレナはその方法を説明した。
 メガイエローは首を降った。毒が頭をまわるのは一番最後だった。それでも、その毒は少しずつ頭の中に流れこんでいく。他の仲間や人々のことを思い計る余裕など有るはずもなかった。
「いや……」
「だったら、あなたはここで、正義に殉じることね」
 それから音が消えた。イエローの鮮やかな身体があった。スーツが、その身体のラインを鮮やかに浮かび上がらせている。丸みを帯びた身体が時折小さく震える。悲しむように震えていた。それが何秒間も続き、それから、シュッという音が漏れて、マスクがはずれて、汗に濡れた黒髪が姿を現した。
「やはり、あなただったのね……」
 歪んだ顔をみて、シボレナは言った。あのとき、ホログラフか何かを使い、この小娘はシボレナをだましたのだ。今まで推測にすぎなかったものが結実して、そこにメガイエローが正体を晒していた。
「ええ」
 頷き、小娘はピンクをまたいだ。這うように進む。時折、身体の中を冒す毒に顔を歪ませる。グローブに包まれた白い手が、ややためらいがちに伸びてきて、シボレナのヒールを取った。彼女は脚をあげた。白い手がそれをメガイエローの口元まで運んだ。
 まだ、小娘は躊躇しているように見えた。それでいいのよ、シボレナは呟いた。
「メガイエロー……」
 別の腕が伸びてきた。気を失っていたはずのピンクが腕を伸ばしてきた。イエローが顔を向けると、ピンクは首を振った。
「すばらしい戦友同士の友情ね…」
「黙れ…ぁっ…」
 手を離し、反射的に指で胸をかきむしるメガピンク――シボレナはメガイエローの顔をみた。感情がさっきより乏しくなっているように見えた。
「その友情があれば、なんでも出来るわね」
 相手は口をあけた。舌を見せると、ブーツのつま先へ口を持っていった。シボレナはするがままにさせた。桃色の鶏肉のような色を帯びた舌が、シボレナのヒールを舐めた。
「さあ…」声を振るわながら、顔を伏せたままだった。「メガピンクを助ける約束を守って…」
「ええ、でも、その前に、掃除が足りないわ。もっと、きれいになさい」
 そうして、脚を少し前に出して促した。頭が震えているのは、泣いているせいだと解った。悔しいなら、もっと悔しがらせる…これまでシボレナの受けた屈辱に比べれば――こんなのなんでもない。
「シボレナ…」
「もし、このわたしに心変わりをさせたくないなら、言葉遣いには気をつけたほうがいいいわよ」
「シボレナ…様」
「何か言いたいことがあるの? メガイエロー?」
「メガピンクのコトを…」涙声だった。愉快だった。「早くしないと…」
「解ってるって言ってるじゃない…このシボレナは、約束は破らないわ」
 ヒールをさらに差し出した。舌が見えた。舐めだした。
「シボレナ様」
 背後に声がした。シボレナは顔を向けた。
「ドクガネジレ。終わったの?」
「はい、シボレナ様」
「では、作戦変更よ」ちらり視線を向けた。「メガピンクにあなたの中和液をあなたの心ゆくまでそそぎ込んであげなさい……?」
「仰せのままに。シボレナ様」
 ドクガネジレは、その腕でメガピンクの肩を掴むと、その場所から引きずり出した。
「いったいなにをする気なの?」
「ドクガネジレの体液には、毒を中和する作用があるの。だから」引きずられていくメガピンクはすでに事切れていた。だけど、すぐ目覚める。「ドクガネジレがその体液をそそぎ込んであげるのよ……」
「どうやって……・」いいかけて、メガイエローが口を噤むのが見えた。「だましたのね……」
「わたしは、命は助けてあげると約束したわ。あなたはその方法なんて問わなかったはず」
 ヒールを離すと、地面をつけた。上半身を起こして崩して座った女、毒の作用で顔をひきつらせている。
「これまであなたは、このシボレナを怒らせすぎたわ」
 小娘の唾液で濡れたヒールでその胸元を小突いた。メガイエローははねとばされ倒れる。目が反抗的だった。なにをしても、この小娘は決して屈することを知らない。
「あああっ!!」
 サーベルで胸を突いた。スーツの弾力に跳ね返される。
「わたしも助けるって……」
「メガレンジャーだったら、正義に殉じてみなさい? ええ、生かしてあげるわ――ネジレジアに決して刃向かわない形でね」
「……どういうこと!?」
 肘をついて身体を起こしている。サーベルの突きは、人間の身体を貫通するのに充分な力を持っていた。
「わたしはシボレナ。ドクターヒネラーの生んだ最高傑作よ。ヒネラー様は人間時代、こう考えていたわ。人間の肉体を強化することで、より人間を強いものに出来る。それがこのわたし、シボレナよ。わたしの身体は機械で出来ている。あなたもいずれそうなるのよ」
「それって」怯えの色で目が染まり上がっていく。メガレンジャーとはいっても、所詮は人間……
「ヤメ――」
 シボレナは握りに力を込めた。集中力を一点に集中するだけのことだった。動かなくなったら――好きなだけ改造してあげる。

 身体が揺れている。脚を捕まれていることに気づいた。みくは身体中が動かなかった。そこにいるのは――
「ドクガネジレ!?」
「気づいたか」
 ドクガネジレは脚から手を離して笑った。身体が動かない。しびれていた。胸が痛かった。心臓が壊れそう。涙を浮かべてみくは辺りを見回した。誰もいなかった。メガイエロー ――千里の姿はどこにも無かった。
「もう、シボレナ様の許可はいただいているんだよ」
 ドクガネジレは、今度は両足を掴んで、開かせた。反抗したかった。だけど、体中が痛かった。毒で――このネジレ獣の毒が体中に回っていて、血管が沸騰するようだった。脚が開かれ、腰のホルスターからメガスナイパーが抜かれても、それを止めることが出来ず、銃口が脚の付け根にあてがわれたことだけはハッキリ解るのに
「や――!!」
 シュパっという気の抜けた音に続いて、煙が見えた。すべては白濁していたのに妙に明敏な感覚で、プラスティックの焼ける臭いがした。外気の冷たさが皮膚を舐めて、バチバチという音が二度ほど続いた。胸のあたりから火花があがった。
「あああっ!」
 肩を揺らして逃げようとするのにできない。みくは狂ったように声を出した。だけど、それが声になっているのか、自分が声にしているのかさっぱり解らなかった。
「いますぐだからな!」
 ぶちぶちと裂ける音がする。前触れもなく入ってきた。脚の付け根を突き破り入り込んできたその剛直したものは、ただ一本の長い鉄パイプのようだった。氷の棒のようで入り込み動きはじめ、音がして肉の焼ける臭いが続く、体の悲鳴を悲鳴として感じていたのに、真っ白に染まってしまいそうで、二度体が揺れた。
「あああっ!!!」
 痺れて判別しない感覚から、感覚はナイフの鋭さをもって、身体の中に流れ込んできた。倦怠感、痛み、痺れがすべて消散し、代わりに現れたのは、今村みくの身体が、メガピンクにインストールしたまま、内側から破壊されていた。
「え…あああぁっ…い、いやあぁぁあぁ!!!!」
 ぶちぶちぶちという音は、氷河が破裂して外界に流される力をもって入り込む。剛直したものは、彼女の初めての身体に入り込むには、余りに巨大で、あまりに破壊的でありすぎた。幕は破られ出血をともなったが、ぎゅうぎゅうと音をあげて侵攻するドクガネジレの生殖器の前に、無に等しかった。
「ああああぁあぁっ!!」
「感謝しやがれ、メガピンク! これで! おまえの命は救われるんだからな!!」
 痛みは瞬く間に、限界を越え、みくにはなにがなんだか解らなくなった。ただ、メガスーツを着ていた。着ていて、犯されていた。胸はいっぱいで、ただ、生殖器の先端の膨れ上がった部分が、身体のどこまでも奥へ入り込んでは、その先端をびゅびゅと奮わせていた。
「あああぁ…ぁああぁっ!! い、いやぁぁぁぁ!!」
「オラ! オラアアァァ!!」
 意識が吹き飛びかけて戻ってきた。ちゅぶ、ドクガネジレの精液が一番奥へ流れ込んできた。どくどく、と、まるでペットボトルを逆さまにしてそそぎ込むように、大量の液が入り込んでくる。
 みくはのけぞり、腰を落とした。ただ相手に引きずられて、腰を浮かせてはまた落ちる。意識はついたり消えたりを繰り返した。心臓が高まり、のどから何か熱いものがこみ上げてきた。
「ううぐ…ぁぁぁ」
 何かを吐いて、泡を吐いた。マスクの中が臭くなり、バイザーにふきかかると跳ね返ってきた。顔を嘔吐で濡らして、メガピンクはただなすがままにされるしかなかった。

 シボレナは微笑んだ。手術は無事完了したといって良かった。
 胸に青白い光が灯っていた。変身は解かれ、裸体で台の上に横たわっている小娘――スーツに暗号化されたデータによれば、城ヶ崎千里という名前の女がそこにいた。
「千里、起きなさい」
 瞼が開いた。ただ、機械的に身体を起こす女は、顔をシボレナに向けた――
「おはようございます、シボレナ様」
「調子はどう?」
「問題ありません」
 その胸元は開かれ、六角形の金属地の機械が埋め込まれていた。その中央に、ガラスのはめ込まれた空間があり、その青白い光はそこから放たれていた。それは、溶接のアーク光に似て、太陽を思わせる光だった。
「そう、それは良かったわ」
 シボレナは胸元に手をあてた。指をその埋め込まれた機械にかけた。結局のところ、人間が信用出来る筈も無かった。この小娘はこれまでシボレナ、ネジレジアに刃向かい過ぎた。完璧な改造を施さなければ、信用出来るはずもなかった。
「ではまず、あなたにやってもらいたいことがあるわ」
「はい、シボレナ様」
「これからあなたと同じ手術をするメガピンクに、あなたがこのメスを入れるのよ?」
 シボレナは、その銀色に輝くメスを取ると、女に手渡した。キャスターの転がる音がして、クネクネたちがストレッチャーを運んでくるのがわかった。上には、金属製の拘束具で固定されたメガピンクが乗っていた。饐えた臭いを発していた。毒は完全に中和されていた。もっとも、そんなこと些細な問題でしかなかった。
「返事は?」
「はい、シボレナ様。メガピンクにメスを入れます」
 女は――メガピンクであった女は言いながら笑みを浮かべた。その笑みは、シボレナのつくる表情と同じだった。
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