驚き! 人体検査のカラクリ(後編)


 いやがおうにも胸の高鳴りがわかった。INETで検査は受けている。でも、一度、第三者に見てもらう必要があったかもしれない。
 何故か何も考えられず、レナの光宿る瞳に頷いていた。不安感がするだけ、手が震えそうになるのを抑えながら、
 『特殊な計測装置』は脳の断面図をとったりするCTスキャン装置とほぼ同じ形をしていた。レナがコントロール装置を操作するのを、ぼーっと見ていた。
「ここに寝てください、寝たら動かないで」
 本物のCTスキャンと違ったのが、そのベッド状の台がステンレスで作られており、マジックテープの固定具が手錠や足かせのようになっていたことだった。千里が仰向けになると、頭の上に立つレナが視線を送った。
「すぐ終わるから安心しなさい……」
 レナは綻んだ。また千里はデジャブを覚えた。どこかで見た気がした。それもあまりよくない感情の記憶の中に歩きがしたが、記憶にモザイクがかかっていてさっぱり思い出せなかった。
 レナはコントロール装置に戻った。そのキー配置はエレクトーンを模倣していた。黄色いキーを押すと、ステンレスの台がCTスキャンを模倣した機械の中に納まって扉が閉じた。千里の頭部が見えるカメラの画像を出した。
「眠い……」スピーカーが声を拾った。
 今は白衣のレナではなく、シボレナだった。しかも、メガイエローのDNAに手を加えたものを自分のコントロール基盤に記憶させており、アーマーの色が黄色になっていた。
 千里の目はとろんとしていた。ジャスミンティーには弱い睡眠導入剤が混ぜてあり、この廃病院の空気には幻覚剤が混ぜてある。廃墟の病院で千里が見た人は、クネクネか洗脳されたネジレ人間か幻覚しかなかった。
 シボレナが脳波を表示させた。まだわずかに意思のほうが強い様子だった。赤いキーを押し、弱い超音波を脳に送った。脳波が急激に変化していく、まもなく睡眠の表示を示した。カメラ画像を見ると、敵の手に落ちたことも知らない少女が、瞳を閉じて安らかな表情を示していた。

 白い膜が覆いかぶさっていた。意識を混濁させたことすら解らないほど困惑していた。襟は発汗に汗ばんでいた。寒気がして武者震いがした。邪気を含んだ空気がナイフのように流れていた。
「作戦は大成功だわ」
 ――レナの声に目を閉じたまま、千里は頭を動かした――背中にステンレスの底抜けの冷気を感じる。クリーム色のタンクのような――機械の中に千里はいた。覗き穴が開いていて、女の顔が見える。
「作戦ですか、先生?」
「先生とはね、メガイエロー」
 冷たい声の続きに戦慄した。その声にはまぎれもない聞き覚えがあった。
「シボレナ!」
 千里の丸い瞳が大開きになって、ネジレジアの最も憎むべきライバルが彼女のことを見下しているのを強いまなざしで睨んだ。あのデジャブはこれだった。レナは紛れもないシボレナだった。
「そんなあ……」
「何が起こるかわからないものね、メガイエロー。あなたを探すためにだいぶ苦労したわよ」
 シボレナは得意げになって言った。千里は腕を動かそうとした。だが、とっくに拘束されていた。足も動かない。舌を噛むと、右手にいつものものがないのに気づいた。
「……デジタイザー」
「これのことかしら?」
 シボレナは自分の腕にはめたデジタイザーを千里の目の前にかかげる。
「返しなさい!」
「まずは自分の立場をわきまえたものを言うのね?」
「くっ…どうする気なの?」
「この機械はあなたのベッドよ。デジタル世代に合わせてマルチメディア・ベッドにしてあげたわ。地獄にもウォークマンとパソコンぐらい持っていってあげないとね」
「…殺す気なの?」
「人間はいつか死ぬわ。そんな死に急ぐこと無いじゃない。それより私と沢山遊びましょう。これを見なさい」
 覗き穴の下にあるディスプレイがついた。
 ――どこだ、メガイエロー。
 ――おーい。
 それは朽ちた病院のロビーで彼女のことを探す仲間の姿だった。
「私が呼んだゲストよ。もしね、あなたがあんまり強情だとこの建物が崩れて、ロビーにいる仲間を生き埋めにしちゃうわよ。メガスーツを着ていても、何百トンもののコンクリートが圧し掛かれば、ただじゃ済まないわよ」
 シボレナは服従することを望み強要していた。自分の油断に我慢ならず、千里は仲間を助けたかったが、服従することは死を選ぶよりも嫌悪することだった。
「……でもあなたに直ぐに答えを出せって言うのは無理よね。大丈夫よ、考える時間はたっぷりあるわ、たっぷりね」
 余裕のある含みをシボレナが漏らすと、彼女は覗き穴を閉じた。ディスプレイが消えて漆黒が千里を包み込んだ。ひどく不安だった。完全に無防備で、生死を憎むべきライバルに握られていた。こんなことは、今まで無かった。立場はいつも逆だったのだ。
「まずは音楽を聴いてリラックスしてもらいましょう」
 身体を包み込むように設置されたスピーカーが、立体的な声を発した。はじめひどく低い音だった。ライオンが獲物を狙って草地をのっそりと進むような音だった。すぐに音はやみ、今度はハードロックライブの大音響だった。ただそのエレキギターの音に規則性は無い。
 視界を奪われて、聴覚も奪われた。人は五感が周りの状況を把握できないと、不安になる。千里は十分強い。その強さは女子高生としてのもので、異常事態に耐えられるかどうかは自信が無かった。
「何が……起きようとしているの…」
 痛みや苦しみはない。不気味だった。ワイシャツが汗で冷えた。その表面に下着が薄く現われていた。果たしてこれが何かの攻撃なのか、千里にはさっぱり解らなかった。

 低音とキンキンのギター音を不規則な周期で与えられ始めて、もうだいぶの時間が経っているはずだった。暗闇には永遠の時間だった。耳鳴りを覚え、動悸が高いまま落ちなくなった。ぴんと張り詰めた緊張に汗が眉間を伝った。
 前触れ無く、音が止まった。静寂が包み込んだ。口をパクパクさせていた。次何があるのか、その不安に気の強い千里も動揺を隠せないでいた。
「リラックスできた?」シボレナの声、千里の調子はすっかり乱されてしまっていた。「三時間の演奏会はどうだった?」
「三時間……うそ…」とても信じられなかった。一晩中は続いたはずだった。
「そう、まだ三時間しか経ってないのよ。あなたの仲間は探してるけど、たぶん一生掛かったって、この部屋には自力でたどり着かないでしょうね」
「……」
「まだホンの前菜よ――」
 まだシボレナが喋っていたが、どんどんひどくなる耳鳴りが千里の集中を途絶えさせた。耳鳴りはあっという間にありえないぐらい頭の中をどんどんと叩き始めた。異常なものを感じた。耳に機械が干渉を与えてるようだ。
「ぃゃ……」
 耐え難い耳鳴りに、肢体を固定された彼女がもがいた。ステンレス台はビクともしない。インストールすればこんなもの一発だが、いまはただの制服の女子高生だった。耳鳴りに耳の奥底から痛みがする。耳垢が音速で鼓膜にぶつかってるみたいだった。
「うっ」
 ぷちっ。明確な音に続いて、耳鳴りが急激に音量を下げて、普通に戻った。つーっと千里の両耳を真っ赤な血が伝った。生暖かった。身体を内部から犯されていた。耳だけですむはずが無いと思った。
「脅さないで、正々堂々としなさい!」
 千里の声は凛々しくもあり金切り声でもあった。シボレナの不敵な声がスピーカーからする。
「怖いでしょう、そうでしょう。じゃあ、そろそろハード系をはじめましょうか? ソフト系は苦手なのよね?」

 シボレナは手元のダイアルを指で掴んだ。つまりを捻る。千里の肢体の拘束具は機械の稼動部分から分岐して、電力を流せるように設計してあった。
「ああああああぁ! ああぁ!」
 悲鳴は直ぐに聞こえた。

 目の前に稲光が交錯していた。自分が叫んでいるのかどうか、千里はよくわからなかった。血管が沸騰して、全身から出血しているみたいだった。
「うわああああああぁ、はぁはぁああぁぁぁ――」
 痛みは無かった。ただ、猛烈な熱と苦しみだけが支配する世界だった。
「ああぁんあぁーーっ!! し、しんじゃう! このままじゃ!!」
 肉の焼けるような臭いがした。自分の身体が焼かれる臭いに、猛烈な吐き気がした。ブレザーやシャツの結び目が焼けて、白煙を出はじめた。
「どうかしら、痛いかしら」
「んぐっ!」口から飛び出た嘔吐物が覗き窓にかかる。落ちたそれは矯正整った鼻に落ちて汚した。
「汚いわねぇ」
 全身がぴくぴく震えていた。
「おっと、気絶しちゃ駄目よ」
 そういうと、急に視力が開けてきた。ショックが静まっていく。
「…くぁ……はぁはあ…」
 嘔吐物で汚れた千里は少しずつ頭が動き出すのを感じた。電流はほとんど切れたのだ。電流で全身を嬲り者にされて大きく息をしながら、鼻をぴくぴく揺らしていた。
「汚い顔ね。私は綺麗なものしか好きじゃないのよ。洗ってあげるわ」
 再び覗き窓が閉じられ、暗闇が訪れる。千里はショックにそれどころではなかったが、次に行われるであろう何かの行為に、眼が瞬きをしていた。意識をしっかり持って、千里。自分を勇気付けながら、どうしようもなさを知っていた。
 ズッボン!
 何かが落ちる音だけした。何かが押し寄せる音、水――水流が押し寄せている。それはこのカプセル型機械のどこかに流れ込み、水が入っていく。前は全く見えなかったが、カプセルの中に水が入っている様子は解った。
「ちょ、ちょっとお……」
 即効性のある暴力では千里は容易に屈服しないし、屈服させられない。
「卑怯よ。あたしはこんなことでは負けないわ。
 負けない、さあ、早く水をとめなさい。
 シボレナ、聞いてるの? なんとか答えたらどうなの?
 シボレナ! シボレナ! シボレナ……?」
 答えは無かった。どこかでモニターされているのは確かだった。だが、沈黙がある。おそらくシボレナは千里の姿を見てほくそ笑んでいる。そうよ、負けちゃ駄目、自分、がんばれっ。
「こんなことしたって、無駄よ……」
 水面は千里の背中にある。肢体が固定されていては微動だに出来ない。徐々に水面があがっていく様子は知れない。さっきのロックで耳が少し遠くなっている。水面がすぐそこにあるのか、まだだいぶあるのか。
「何とか言ったらどうなの? 早く!」
 水がステンレス台まで入ってきて、表面を流れ始めた。ブレザーに染み込んだ。素肌に触れた水が妙な暖かさを持っていた。
「フフフフ、そんな汚い顔してるからよ、千里さん」
 スカートが濡れて、腿の付け根を包んでいる黒い下着に水が触れる。水かさがどんどん増えていく。戸惑いが広がっていく。
「一体、あたしに何を望んで――うぶっ…ううう……」
 首筋から頬を伝い、表面張力の働いた水面がすぐそこまで迫っていた。既に首から下は水の下で顔に水が流れ込んでくる。千里は口を閉じた。
「ふう!」
 水の中で光が乱反射していた。歪んだシボレナの顔を千里は見ていた。顔がもぐったところで水は止まったようだ。いっそう静かになった。顎を引いて、水面に顔を近づけようとしたが、あと一歩届かない。
「うぶぶ…っ!」
 勉強だけでなく運動神経に優れている千里は、テニスだってするし、水泳もする。夏には二十五メートルプールをクロールで何往復もしている。だから、肺活量はだいぶあったし、多少なら自身があった。だが、あっという間に顔が膨らんだような感じになった。
「あぶ!」
 泡が一つ浮かんでいく。水面のシボレナの顔が微笑んでいる。
「あぶぶぶぶぶはああぁ」
 束になって泡沫に消えた。喉に水が流れ込んでくる。横になってることで、肺へと流れ込んだ水が弁に引っかかって、針で刺されたような痛みが胸から走り、水の中で水を吐いてむせた。
「オホホホホホホホ」
 シボレナが笑っている。それどころではなかった。水が食道と肺と胃と口内を濁流していて、とても痛い。つんと頭から耳鳴りが走って、それは最高潮に達した。
「あぐつ!」
 目の前が真っ赤で急に意識に靄が掛かった。しかし同時に唇に空気が触れた。
「うぶうう! はああぁ!」
 唾液と胃液の混ざり合った汚水を千里は吐き出した。既にずぶ濡れのブレザーとシャツが肌色の液体に汚れる。意識を失う直前、シボレナが水面を下げたのだ。そのことを理解するまでしばらく呆然としていた。
「どう、ウォーターベッドは?」
「あたしを殺す気なら、さっさと……」
「生け作りになった魚を見たことあって? 千里さん。身体中の肉を切り刻まれて、陸に上げられても、内臓がかろうじてつながっているから、魚は口をパクパク言わせてるわ。人間ってそういう無意味なことに残酷よね? たまには人間も生き作りになった魚と同じになればいいのよ。
 あなたは私にとってとても憎い。殺す気ならこの手でいつでもできるわ。だけど、あなたを――メガイエローを殺しただけじゃ、私の気がすまない」
「歪んでるわ……」
「私は残酷になるように作られてる。そういわれて光栄よ」
 そのとき再びのぞき窓の下のディスプレイが点灯する。
 ――なんだこれ!
 ――これ、メガイエローのスーツじゃねえか。
 四人の仲間は黄色いスーツを囲んで話をしている。
「もちろん、あれはレプリカよ。あそこは霊安室」
「みんな……それは罠…」
「無駄よ、聞こえないわ」
 ――まさか、千里は。
 ――レッド、めったなことをいうもんじゃない。
「あの霊安室の天井にはガソリンタンクがついていて、生コンクリートと高性能爆薬もセットされてるわ」
「まさか!」
「あなたには特別に見せてあげるわ」
 シボレナがスイッチを押したらしかった。天井がぶち抜かれ、生コンクリートが四人を襲う。
 ――うわあああああ!
 ――きゃあああああああーっ!
 ――なんだ!?
 ――う、動けねえ。
 攪拌タンクから流れ出た生コンクリートが床に流れると、四人の足をすくった。あっという間に硬化して行き、四人を捕まえられた。
 ――罠だ。逃げろ。
 ――でも、足が……
 ――そんなこと、どうでもいい。
 既に千里の顔は歪んでいた。シボレナはその顔をつぶさに観察していた。
「次は――」
「やめてぇ! 四人を助けてあげて!」
「そうよ、その顔よ。あたしが見たかったのは。仲間の危機に命乞いすら求めかねない献身的なメガイエロー、あなたよ。だけど、止めるすべは無いわ」
 ガソリンタンクが破裂して、タール状の中身が足を取られた四人に降り注ぐ。
 ――きったなーい。
 ――これはガソリンだ!
 ――おっし、脱出。
 ――おい、メガレッド気をつけろ。ちょっと火花を飛ばしただけでこの部屋ごと爆発するぞ。
 ――健太、早く助けてぇえ!
 メガピンクがパニックに陥って身体をブンブン振り回している。
 ――落ち着け、メガピンク。
 そのとき、メガピンクの足元から静電気が走ると、ガソリンの表面を伝って、部屋が一瞬で火に包まれた。
 ――うわっ。
「みんなぁ! もういいでしょ、なんでもするから。あの四人を助けてあげて」
「残念ながら千里さん、それは無理よ。でもその前にここから離れなきゃね。ここもおそらく爆発するわ。あの四人ならメガスーツの防火能力で命は取り留めるでしょうよ」
 ――きゃあああああああああーーーーっっ!
 その上から粘土型の爆薬が降り注ぐ。上昇した室温に地面に落ちないうちに破裂し始めた。悲鳴より火の手が勝り、カメラに火が降り注ぐ。下から微動が全身を突き抜けた。火の手が一瞬レンズの視界を開く。四人がもがき苦しんで、黒焦げになっていた。

 鼻をずるずる鳴らして、城ヶ崎千里は咽び泣いていた。
 彼女はずぶ濡れの身体から雫をしたらせていた。足元に水溜りが出来ていたが、多少濁っていた。胸を汚して強烈な臭いを放つ汚物と、変色した尿だった。
「健太たちが……」
 自分の不注意や油断やさまざまな要因から仲間を傷つけてしまったことは、千里の心に深い傷を抉った。その傷が女戦士から人間としてのプライドを奪った。もちろん、失敗を知らないわけではないが、いつもネジレジアとの戦いでは自分の優位に立って来た。
 優位が崩れ、千里は捕らえられた。追い詰められ、尿意を感じると、我慢することなく放尿していた。動物の臭いが立ち込めていたが、もうどうにでもなれといった感じだった。
「残念だわ……まさかあなたがこんな簡単に泣き出すなんて」
 現実は時にして女子高生にはあまりに残酷だ。
 ヒールの甲高い音と共にシボレナが戻ってきた。きりっとした瞳で見つめられて、目を逸らした。
「あなたも所詮、女の子だったってことね」
 そういって、シボレナは唇を強引に重ねた。真っ赤な口紅に染まった唇をすぼめる。立たされて、天井から鎖で止められてバンザイの姿勢にされた千里の顔を、シボレナがみつめこんだままにやけていた。凍りついた唇だ。
「生きたまま死んじゃったわね。可愛そうに、でも、あなたには大事な仕事が残っているわ」
「……大事な…仕事…」
「そうよ、クリーチャーネジラー、姿を現せ」
 闇が一瞬開けてサイコネジラーが現われた。頭に長い角を一本生やしている。
「この可愛いクリーチャーネジラーがあなたにネジレ獣の精子を植えつけてくれるわ」
 角が真っ赤に輝いていた。もう、どうにでもなれ……
「もうちょっとうれしそうにしなさいよ、無愛想ね。ネジレ獣の母になれるのよ――処女のメガイエロー」
「くっ…」千里は処女だ。だからといって、失うのを急ぐつもりはないし……どっちにしろ、もうあたしは死んでいる。
「じゃあお願いね、クリーチャーネジラー。素敵なネジレ獣を生まれるようにしてね。あなたの精子は千里さんの身体の細菌から構成して合わせてあるんだから。きっと大丈夫よ」
 シボレナの顔に長い影――千里の目の前にクリーチャーネジラーが立ちはだかった。その大きな胸板を呆然と見上げて、逆三角の鋭い視線と目が遭った。
「怖いのか?」
「怖くなんて、ないわよ。やるならさっさとやって」
「そういうなよ」
 クリーチャーネジラーはしゃがみこむと、スカートをめくりあげた。
「刺激的な下着だな」
 びりっ、答えを待たず破り捨てられて、下着はぼろきれと化した。とっさに内股になった。女としての本能だった。
「よっこらせ」
 真っ赤に腫れた角を千里に向けると、方向を合わせるように動いたあと、その先端が茂みに触れた。
「あぐっ……」
 視界の揺らぎと共に異物が体内に入り込んできた。焼きごてが膣の中に納まっているようだった。涙が頬から首筋を伝い、胸の間に流れていく。
「はう……ああぁ…」
「もっと色っぽい声で喘いで見せろよ、つまらないな」
 ゆさゆさとクリーチャーネジラーの角が揺れる。ああぁ、唇と唇の間に糸が引いた。
 どさっ!
「千里!」
「メガイエロー!」
 千里は聞き覚えのある声を聞いた。白濁して曇った視界を左に振ると、シボレナと……爆発に巻き込まれたはずの仲間が対峙している。
「どうして……そんな……ああぁん!」
 仲間の存在を見ると、曇った感覚が急に鋭敏に冴えた。流れ込む濁流のような欲望にあふれた角が膣をかきまわしていた。叫ぶ。
「いやあああああぁ!」
「この娘をよくもこんな目に遭わせてくれたな」
「おのれ」シボレナも急展開に驚いているようだ。「おまえら何故、ここに……!」
「天下無敵のメガレンジャーがそんな簡単にやられてたまるか! メガブラック、メガピンク、千里を助けてくれ。メガブルー、一気に決めるぜぇ!」
「よし」
「解った、メガレッド」
「見ないでえええええぇぇ!」
 仲間の前で犯されている羞恥心から千里は天を仰いだ。腰が左右に勝手に揺れる。仲間が生きているとすれば、すぐそこで助けてくれるならば、もし体内にネジレ獣が出来たら――
「あああああぁん!」
「じゃまするな!」
「きゃっ!」
 メガブラックとメガピンクが襲い掛かるが、クリーチャーネジラーは腕一本で振り払った。
「させるか、千里を助けるんだ」
「もう、遅い。行くぞ! メガイエロー」
「やめてええええええええ! 出さないでええええ!」
 一度は敗北を誓った。千里は焼きごての中から熱く煮えたぎったねっとりとしたものを受けると、目を回した。膣がぶよぶよになったようだ。身体がネジレ獣の精子に吸い付くのがわかる。本能だ。千里は本能を否定したかった。
「ドリルスナイパーカスタム!」
「マルチアタックライフル!」
「「シュート!」」
 メガレッドとメガブルーの必殺技の光線を受け、派手な爆発を起こしたシボレナは千里に唇を歪ませると、ぼろぼろのアーマーをかばいながら消えた。
「次はおまえだぁ、ドリルスナイパー、03モードッ!!」
 バトルライザーの03ボタンを押して、メガレッドがドリルスナイパーを構えた。これまでの破壊力二十五倍のスーパービームが放たれた。
「ぐはっ…か、身体があぁ! ぐあああああ!」
 ぐじゅう!! 角が千里の膣から抜けて、鮮血と蜜があふれ出た。クリーチャーネジラーはもがき苦しみながら、何歩か後退すると爆発を起こして灰になった。
「千里!」
 武器を下ろした四人は鎖でつるされた仲間の元に集まった。あまりに無残だった。全身ずぶ濡れな上に、嘔吐物で汚れ、その上サイコネジラーにレイプされていた。
「くそっ!」
「メガトマホーク!」
 メガブルーが鎖を切断する。倒れてくる身体をメガピンクが受け止めた。
「千里ツッ!」
 ゆっくり床に下ろすと、口をパクパクさせて震える城ヶ崎千里を見つめた。不意にマスクをリリースすると、意識を失った彼女の口に吸い付いた。
「何を……!」
「待て」
「ぐじゅううぅちゅばぁ!」
 みくが千里の唇に吸いあげた。かなり荒っぽい人工呼吸だった。気道が確保されていないので、一気に貧血を起こした。食道が痙攣し、酸っぽいものが口にあふれた。
「うぶっ」
 不意に食道や喉に詰まった内容物が頬にあふれた。
「しかし酷い」
「耕一郎! すぐにメガシップに!」
「もう連絡は取ってある。さあ行くぞ!」
 朦朧として白濁した意識の中で、城ヶ崎千里は自分の胎盤を蹴る何かの存在を確かに覚えていた。
「待って……」
「どうした、メガイエロー?」
「何で、助けに来たの……あたしはもう……」
「何を言っているんだ! ほら!」
 仲間がいなければ、ネジレ獣の子供を生んだって耐えられた。でも、仲間の目の前で処女を奪われてしまった。千里は俯きながら、口元についた黄色い吐瀉物を手で拭った。訳も無く息が詰まった。

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