新怪人カメラの犯罪

 シュシュトリアンを季節外れの鯉のぼりにして、ローアングルから撮って儲けようとした怪人カメラの目論見は見事にはずれ、撃退されてしまった。怪人カメラのカメラ屋は閉店を余儀なくされ、その後の行方は誰も知らなかったが、実は怪人カメラは近所のDPEチェーン店のアルバイトとして潜り込み、虎視眈々とシュシュトリアンへの逆襲のときを待っていたのだ。

 街はずれの築三十年になる木造アパート、ユニットバスと六畳間と台所だけの貧相な部屋に怪人カメラが戻ってくると、六畳間を突っ切り、台所に入った。そこは既に台所の機能は果たしておらず、窓は暗幕……が無いから、和歌山みかんのダンボールで目張りし、蛍光灯は赤色灯……がないから、赤いフィルムを貼ってあった。写真の現像機材が所狭しとおいてあり、小さな冷蔵庫には缶ビールが少々と色々な感度のフィルムが詰まっていた。うずたかく積み上げられた紙の束と紐に吊らせれた写真が、なんとも雰囲気をかもし出していた。
「フフフフフ……」
 怪人カメラはこれだけはお金をかけたらしい国内一流メーカーの一眼レフカメラを取り出すと、裏フタを開け、巻き上げたフィルムを取り出した。それを魔法のような神業的手つきでさっと、しかし手作業で現像すると、紙に和洋折衷のケバケバしいミニのコスチュームをまとった未熟な体つきをしているが、十分にスタイルのいい女たちが現われてきた。
 そう、何を隠そう、怪人カメラは今日もまた有言実行三姉妹シュシュトリアンをカメラで追いかけ続けていたのである。
「月子ちゃん~」
 不敵な笑みの怪人カメラは何を隠そう次女で一番グラマラスな月子がお気に入りなのだ。鯉のぼりのときに月子のハイキックを受けたときはなんともいえない至福のときだった。だから、なんとしても自分のものにしたかった。
 バッ、その背後にあるボロ布が落ちて、巨大なホワイトボードに張り巡らされたシュシュトリアンの写真が現われた。もちろん雪子や花子のも大量にあるし、ピンチシーンは床にあふれて積もるほどだが、それにもまして月子は多かった。
「グフフフフ…」
 月子を我が物にして、ローアングルでパンチラ写真を撮るなんて、生易しいことじゃ今度は済まない。怪人カメラは思った。今度は月子を我が物にして陵辱し、調教してペットにするのだ。
 そのためには色々道具をそろえる必要がある。そのためには、DPE屋のカスみたいな自動現像機をせっせと動かして稼がねばならなかった。ただ、怪人カメラは手作業なら神業的な現像を見せるのだが、機械になるとしょっちゅうフィルムを駄目にしてしまって、店長にどやされてしまうのだった。

「とう!」
 雪子、月子、花子揃ったキックが妖怪に決まる。妖怪はよろよろとつんのめった。三人はバトンを構えると、必殺技有言実行紅つむじ風をお見舞いした。妖怪は成仏していく。故人曰くといういつもの格言を今週言い忘れちゃった、雪子が見せ場を忘れていたことに気付いても、妖怪はお構い無しに、天に成仏していく。
「楽勝楽勝」
 花子がまるで小学生とは思えない雰囲気をかもし出しながら、首を回して伸びをした。
「ねー、今日、これからクレープ食べに行かない?」
 月子が悲壮に溢れた妖怪を倒したことなど既に記憶の外に追いやったふうに陽気な調子できいた。
「月子、花子、あんたたち、来週テストでしょ!」
「あーもう、そのこと思い出させないでよ。そういう雪子お姉ちゃんだって、期末テストでしょ! 知ってるのよ、成績落ちてるの!」
「なんですって! 花子!」
「まあまあ二人とも」一番身長の高い月子が二人の間に割ってはいる。既に辺りには平和な空気が流れており、いつもの公園に戻っている。その三人の様はまるで若手お笑いタレントが仕込みをしているみたいに、滑稽な風景だった。「クレープ、食べにいけばいいじゃない」
「月子!!」
「はい?」
「はい? じゃないわよ」
「そうよ、月子お姉ちゃん」
 雪子と花子の突っ込みにとぼけた様子の月子、三人はそのときはたと我に帰り、相手の顔を見ると、プッと噴き出した。
「馬鹿ねー、あたしたち」と、雪子。
「ねー」と、花子。
「じゃあーさー、クレープ、クレープ」と、にっこりの月子。
「まあいいかなー、クレープでも」
 珍しく真面目な雪子がこの滑稽な様子に流されて言った。
「あっ! いけない!」
「どうしたの? 花子?」
「あたし、家に財布置いてきちゃった!」
「あっ、あたしも!」
「なにやってるのよ、雪子お姉ちゃん、花子、あたしはもってきてるもんね」
「じゃあ、あたしと花子は財布取ってくるから、月子、先に行ってて」
「うん、いいよ~。じゃああとでね」
 雪子と花子は足早に去っていくと、公園を出たところで普段の私服に戻って、角を曲がっていった。月子も変身を解こうとした。だが、そのとき!
「じゃじゃーん、おはようございます。シュシュトリアン」
「!?」とっさに振り返る月子。「あー、怪人カメラ!?」
「そうです。私です。怪人カメラなのでーす」何故か前より明るくなっていた。「今日はようやくめぐりめくってきた絶好のチャンス」そういうと、西部劇で保安官が使うような投げ縄を取り出して、ぶんぶん振り回した。「月子ちゃーん、この私に捕らえられなさい」
「何を生意気なこと言っているの!?成仏したはずじゃ!?」
 月子は驚愕しながらも構えた。
「ノーノーノー、私はそう簡単にやられたりしない。何故なら私のシュシュトリアンに対する執念は成仏させたぐらいじゃ浄化されないのでーす」
「なら私がもう一回成仏させてあげます!」
「ふーん、姉妹さんはここにいませんよ。一人でどうするというので~~~す」
 最後の語尾を一杯にまで延ばすと、投げ縄を放った。それは見事に月子の胴と腕を縛り上げ、怪人カメラが引っ張ると、めいっぱいに縛りあがった。
「何をするの!今すぐ離しなさい」
「離しなさいといって、離した悪党はいないのでーす」
「きゃあーーー」
 なんとも間延びした悲鳴をあげる月子がするすると、怪人カメラのほうに引き寄せられていく。唇を突き出して怪人カメラはやってくる月子に口付けを迫った。
「やだーなんで、あんたみたいな変態と!」
 シュシュトリアンはその性質上、確かに妙に艶っぽいが、もちろんセックスどころかキスさえも体験したこと無い。月子は縛られた手を思い切り前に突き出すと、張りぼてのカメラを掴んで、そのままジャンプして、怪人カメラの頭上を飛び越えると、背後に回って思い切りパンツを露出させたハイキックをお見舞いした。
「痛っーいー」
「痛くて当然よ。パンチ!」
 難なく縄を引きちぎり、ストレートを見舞うと、紅のバトンを取り出して、再度距離をとった。雪子も花子もいないが、過去に倒したこんな敵楽勝だと思った。財布を取って戻ってくるまでに倒して伸びたところで、三人同時の必殺技を浴びせればいいと思った。だが、その読みはちょっとばっかし間違えていた。
「そうはいきませんよ。なんと新しい私には必殺技があるのです!」
 高らかに宣言する怪人カメラは、その張りぼてのカメラの中からシャッターボタンとそのコードを取り出した。
「えい!」
 その言葉を無視して、月子が大きく二メートルもジャンプすると、ストッキングに包まれたぱんぱんに張ったセクシーな足を突き出してきた。
「シャッターチャーンス!!」
 パシャ! 大きな音がしてフラッシュがつく。攻撃はしそこなったが、強烈な光に失速して月子はなんとか綺麗に着地した。
「ほーら、すごいだろー」カメラから出てきた模造紙大の紙にみるみる間に画がでてきた。下着が大写しになった月子のパンチラの決定的瞬間の写真だ。
「何してるの!?変態!?」
 白粉を塗った顔を真っ赤にさせた月子の突き刺さるようなキックをさらりと避けた怪人カメラはまたシャッターを切る。
「これもすげー」
「変態変態変態!?」
 過激な超ミニ衣装で攻撃しているスーパーヒロインもヒロインだが、撮っている方に全面的に非があるような言い草で若干冷静さをなくした月子がめためたに攻撃をしてきた。さすがに足を大きく上げることはしなくなったが、それでも着物の下でゆさゆさ揺れる胸を見ているだけで、怪人カメラは卒倒しそうだった。
「さーてと、本職に戻るかな! シャッターチャーンス!」
 満足した様子の怪人カメラは、今までやっていたのと同じように月子に向かってシャッターを切った。着地して、振り返って構えた月子はフラッシュに目が眩んだ。
「ん!?ん?!何?!」
 ころん、紅のバトンが地面に落ちた。なんとそのとき、月子の身体が急に金縛りに遭ったように動かなくなってしまったのだ。突然の事態に月子は動揺する。その瞬間、面白がっていた怪人カメラが下劣な男らしい表情を露にして、直立したまま構えたまま動かなくなってしまった月子に迫った。
「シュシュトリアン、私はあなたにやられたことが悔しくてならなかった。だから、そのことを願ったら、どっかの悪い奴が私に人間を金縛りにする機能を与えてくれたのです!」
「えっー!?ウッソー!?」
「嘘ではなく、事実ですよ」
 怪人カメラは眉間を月子とつき合わせた。唇を寄せればその下劣な口と紅の口紅に彩られた酷く艶っぽい唇が重なりそうな距離だ。月子は吐き気を覚えた。怪人カメラがその手で彼女の素手に触れて、腕の赤に金の模様の縫いこんだ腕あてを掴んだ。ひどくよそよそしく気持ちの悪い触り方だ。
「月子さん、あなたはもう私のものです……」
 一層下劣に怪人カメラは笑む。そしてその手の甲を口元に近づけて、キスをした。生暖かい息が手の甲に送り込まれて、死んだほうがマシなほどだ。
「怪人カメラ!? 私は中学生なのよ!? 中学生にいたずらするのはシュシュトリアンが許しても、児童保護法が許さないわ」
 正体がばれればローストチキンになるのも忘れて、過去のヒロインを真似て、格好いい口上を言ったつもりでも、焦っているため決定的に間違えていた。
「シュシュトリアンは許してくれるのでーすね」
「そ、そんなつもりじゃー! いやー!」
 怪人カメラは月子の髪についた金色の髪留めをはずした。どさっとそのストレートが背中を落ちた。今そこにある危機に歪む月子の表情、いつもの自然な笑顔も真面目な表情も忘れて、シワを寄せた顔に脂汗が浮かぶ。その汗の臭いに怪人カメラはますます欲情した。
「もう我慢できねえ!」
 キスしたのとは反対の腕を掴み、怪人カメラは自分の逸物にその手を滑り込ませた。その沸騰した巨大なモノの存在は男というものを意識したことの無い月子にまざまざと男を実感させた。
「やめなさい! 児童保護法が許しても、シュシュトリきゃあああああ!」
 怪人カメラはぐいぐいと月子の手で逸物をまさぐった。太い棒とその奥にある二つの玉と服の上から触れていたそれを上にやって、ズボンの上から潜り込ませた。真っ赤に燃え上がる逸物をじかに触れて、脂汗がさっと引いて寒気を覚えた。
「誰がなんと言おうと俺が許す!」
 逸物をしっかりつかませると、ぐいぐいと散漫なピストン運動をさせた。今にも泣き出しそうになる月子に、さっと怪人カメラが唇を近づけて重ねた。
「うぐぐぐぐっ!!」
 ねっとりとした唾液が口の中に送り込まれて、手元はなんだか濡れている。怪人カメラがうぐぐぐと言ってから、それよりも更に温まったもの――ギトギトの精液がその十分に成熟しきってない月子の手のひらにぶちまけられた。
「だめーなんなのこれー」
「なんなのって?」
 月子と自分の唾液をたっぷり口の周りにつけた怪人カメラがさっとその手を引き出し、月子の口の中に入れた。あまりの速さに彼女は何も出来なかった。
「おれのムスコだよぅ!」
 月子にはまるで口の中でいがいがした大量のミクロサイズのおたまじゃくしが泳いでいる様がまざまざと感じられた。前に保健体育の授業でその電子顕微鏡写真を見ていたから、その様子がまるで自分の口の中で繰り広げられているように感じてしまったのだ。
 血のように真っ赤な口紅が頬の方に伸びている。白粉が破れた紙のように割れて、中から白く艶のある肌が顔を見せていた。
「いやっ……」
 もう我を忘れて月子は恐怖におののき、顔を歪ませていた。その瞳から涙が流れ出る。怪人カメラはその様に今まで以上に欲情した様子で、ひび割れた舌を口の間からガラガラヘビのように突き出すと、顎を嘗め、首筋を嘗めた。
「んんんんッ……」
 思わず声をあげてしまう月子。着物の間にわずかに見える胸元に向けてナメクジのような動きを繰り返しながら迫っていく。
「ああっ!あぁん!」
 月子は弱点が胸元だったのだが、自分でも始めて知るようでひどく喘いだ。金縛りにあるはずの身体がゆっくりしなってえびぞった。
「んんんん!」
「お、どれどれ、ふーん、下着までド派手だな」
 胸元を無理やりこじ開けて、怪人カメラが中をのぞく。そのどう考えても中学生に思えないほど豊満な胸に赤に金の模様の入ったエナメル質のブラジャーがついていた。
「中学生はブラジャーつけない奴もいるんだぜい」
「ああああァ!?」
 今は指を這わせているだけなのに、怪人カメラの声が全く聞こえないのかというほど月子は悶えていた。
「そうか、さては月子ちゃん、ここが弱点なのね。とーいうことはー」怪人カメラがすばやく足が一番長いため一番長いがそれでも超ミニなスカートの中をまさぐった。にこっと怪人カメラが笑う。「濡れはじめてるよ!」
「そんなことなぁぁぁああ!」
 胸の谷間に指を入れて、こすったあとにエナメルのブラジャーの内側に手を入れた。そこにある突起はすでに大きく反りたっていた。
「いやー」
 怪人カメラは両腰に手を入れ、難なく腰巻を引きちぎった。どさっと積めていた着物がルーズになって、胸元が見えると、そのままぐいと広げた。露になってしまった月子の胸とその弱点――怪人カメラがブラジャーの前のホックに唇をやると、そこらへんを嘗めて散々悶えさせたあと、ねずみのように伸びた前歯でホックを二つに割った。
 ブルン!まるで音がしたみたいだった。プリンよりも光沢を帯びた丸みのある二つの胸がブラジャーの裏側からあらわれた。その乳房は何も知らないかのごとく見事なピンクだ。その周りがうっ血するときのように紫だった。
「シュシュエロヤン! シャッターチャーンス!」
 怪人カメラは一歩下がって、その無様な姿をファインダーに納めた。まるで吊るされたのごとく、立ち尽くしている月子は宙のどこかをみている。たとえ魔法でも立っているのが不思議だった。
 ここは平和な児童公園の昼下がり。空風が吹き、雷雲が立ち込めてきた。ゴロロと唸りをあげる雷が児童公園を月子と怪人カメラのまわりに陰を落とした。
「ひゃあああ!」
 月子は全身をぶるぶる震わせた。露になった胸元からお酉さまのエナジーが抜けていく。肌はみるみるまに色を失っていく。シュシュトリアンが暴かれて、一気にエナジーが抜けていく様が光のベールになって現われた。それは虹色になって天に昇っていく。
「ワハハハハハア!」
 高らかに笑う怪人カメラはそれが終わり始めた頃、堰を切ってミニの内側から吹き出る愛液を見逃さなかった。その粘液はストッキングを伝ってブーツへ流れていく。月子は生体エナジーの虹彩に全身を愛撫されて、研ぎ澄まされていた感覚が一気にオルガズムまで駆け上ってしまったのだ。
 そのあと、たっぷり模様をフィルムに収めた怪人カメラはわなわな蠢く股間に手を入れ、パンティを押し下げた。ぐっしょり濡れたパンティがブーツの上まで来ると同時に、怪人カメラの手にどばっと潮を吹いた愛液と黄金の尿が噴き出てきた。
「よーし、月子ちゃん、家に帰ってゆっくり飼ってあげるからね~」
 パチンと指を鳴らした瞬間に糸の切れた月子はどさっとその砂地の上に倒れた。濡れた身体に塵がまとわりついて、コスチュームを汚していった。痙攣を起こし、カメレオンのように舌を突き出して伸びていた。すっかり満足した怪人カメラは肩にその長身の成熟した中学生を担ぐと、児童公園から足早に去っていった。


「月子ー」
「月子おねえちゃーん」
 クレープ屋の前で、いつまでも来ない月子を探す雪子と花子は、次女が怪人カメラの嬲り者になっていることなど、露ほどにも考えなかった。


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